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もくじ

★ 「愛する」か「愛す」か/ 日本語
★ アイルとアイランドの違い/ 英語
★ アクセント記憶法/ フランス語、スペイン語、ポルトガル語
★ 「追う」と「王」/ 日本語、英語
★ 過去形は実は4通り/ 英語
★ 金曜日の秘密/ 英語、ドイツ語
★ 今日は「この日」/ 日本語など
★ 化粧と世界、そして宇宙/ 英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語
★ 「心」の話/ 日本語、中国語、ロシア語、英語
★ 「シェ」と「カーサ」/ フランス語、スペイン語
★ 「ス」=「エ」/ 英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語
★ ドイツの呼び方/ 英語など
★ 日露の奇妙な関係/ 日本語、ロシア語
★ のみとノミ/ 日本語、中国語
★ 「マガジン」は「雑誌」か/ 日本語、アラビア語、ロシア語、フランス語、英語
★ 元過去分詞の単語/ 英語 

★ 「愛する」か「愛す」か/ 日本語

 もとは英語の動詞 "love" やフランス語 "aimer" への訳語として作られた「愛する」と「愛す」は、今や文学作品に触れずとも誰もが知る言葉である。両者は意味を共有し、違いは活用だけなので、互いに置き換え可能なはずである。が、改めて調べてみると微妙な使い分けがあることが分かる。

 したがって、まとめると次のようになる。
動詞否定可能受身など未然連用終止連体仮定已然命令
サ変活用・愛する×
五段活用・愛す×

 見事なまでの混ざりようで、この単語がよく使われているという証拠でもあり、それだけ世の中は愛に満ち溢れていると言えよう。

★ アイルとアイランドの違い/ 英語

 英単語 "isle" と "island" はどちらも意味が「島」であり、綴りもよく似ている。黙字 s をもつところまで同じである。しかし、実はこの2語は全然違う単語なのである。
 まず、"isle" は古フランス語から借入された語で、ラテン語 "insula" に遡る。現代フランス語の「島」 "île" (^ はかつて後ろに文字があったという印)、イタリア語 "isola"、スペイン語 "ísula" はこの "insula" のなれの果てということになる。
 一方、"island" は古英語"igland" (※ i は長音、「水に浮かぶ土地」から)に由来する。g の発音がヤ行子音になった後に消失してしまい、フランス語由来の "isle" との連想から s を入れるようになったものである。

★ アクセント記憶法/ フランス語、スペイン語、ポルトガル語

 イタリア語では、だいたい後ろから2番目にアクセントがあり、長めに発音される。例えば、"amore"(愛)は太字で示した "o" の上にアクセントがあり、「アモーレ」と発音される。しかしながら、"verità"「ヴェリター」(真実)のように最後の音節にアクセントがあったり、"immagine"「インマージネ」(画像)のように後ろから3番目にアクセントがある場合もけっこうある。これは、スペイン語、ポルトガル語などの他のロマンス系言語にも言える。

 実はロマンス語から分かれた言語は、対応する単語同士では、アクセントは対応する音節にある。例えば、先ほどのイタリア語単語 "verità" を見ると、フランス語⇒ "verité"、スペイン語⇒ "verdad"、ポルトガル語⇒ "verdade" と、いずれも対応する位置にあることが分かる。"imagine" も同様で、フランス語⇒ "image"、スペイン語⇒ "imagen"、ポルトガル語⇒ "imagem" となる。

 ここで注目したいのはフランス語で、フランス語単語のアクセントは必ず語の最後の母音にあるので、対応するフランス語の単語を覚えれば、自動的にイタリア語、スペイン語、ポルトガル語の単語のアクセント位置も簡単に覚えられるのである。しかもこのアクセント位置はロマンス語のさらに前の段階であるラテン語の頃から一部動詞を除き、ほとんどの単語で変わっていない。なので、ついでにロマンス語系言語のおおもとであるラテン語単語のアクセント位置まで覚えられるのである。
 ただし、フランス語はラテン語に比べ音節が脱落しすぎており、

など、通用しない場合もなくはない。そう考えると便利なのかどうなのか微妙な技ではある…。

★ 「追う」と「王」/ 日本語、英語

 日本人はカタカナ好きなので、「下段蹴り」を「ローキック」とも言う。また、「秩序と混沌」を「ロウとカオス」とも言う。しかし、これは実際の発音からすれば「ロウキック」(low)と「ローとカオス」(law)と書いたほうがふさわしい表記といえる。

 なぜなら、中学校で習うとおり、英語では「オウ(※二重母音)の発音と「オー(※日本語より口大きめ)の発音は厳密に区別されているからである。さらにふつう or とか oar とつづる「オア(※「ア」はアメリカでは r の音色が加わった曖昧母音。イギリスでは「オー」と同音)もあるため、"sow"(種を蒔く、または雌ブタ)"saw"(のこぎり、または "see" の過去形)"soar"(舞い上がる)などの区別は至難を極める。さらに "sow" には "sew"(縫う)という同音異つづりの単語まで存在する。他の組み合わせとしては、"row - raw - roar"、"flow - flaw - floor"などがある。

 日常会話では文脈で意味を判別できるものの、英語を極めるためには避けて通れない知識ではある。

★ 過去形は実は4通り/ 英語

 中学で習う英語の過去形は不規則で覚えるのが非常に面倒に感じられる。大学のとき、理学部だったせいか "teach" の過去形を "teached" と書いているやつがいて英語の先生に厳重注意されていたのを覚えている。が、英語の過去形は、実はほんの数パターンしかない。

① 歯茎閉鎖音(t、d)を接尾辞としてつけるもの

② 母音交差するもの

 母音の音色(音質)か長さ(音量)を変えることによって、時制を変える。

③ ①と②の両方を行うもの

④ 補充形

 もともと別だった動詞を組み合わせたもの。 be ⇒ was/were、 go ⇒ went

 以上のどれにも当てはまらないのが、"stand ⇒ stood"である。"stand"は「立っている」という意味である。ということは、「立つ」という動作の完了形とも考えられる。話法の助動詞(can、may、mustなど)と同様、現在形の "stand" 自体が完了形由来のため、過去形が不規則なのかもしれない…。ドイツ語の "stehen" なんか直説法過去で一・三人称単数で "stand" になるし…。何か匂うね。誰か知ってたら教えてください。

★ 金曜日の秘密/ 英語、ドイツ語

 ドイツ語では、女性名詞は2格(~の)で語尾-sをとらない(「ゼロ語尾」という)。「父(Vater)の部屋」は "das Zimmer meines Vaters" となるが、「母(Mutter)の部屋」は "das Zimmer meiner Mutter" となる。この法則は、かつてゲルマン語派に共通の特徴だった。英語でもこの法則が生きているところがある。それは曜日の名である。

 英語の曜日名では、"Sunday" は「太陽の日」、"Monday" は「月の日」、"Saturday" は「サトゥルヌス(ローマ神話の神)の日」だが、あとはゲルマンの神々の名からとられている。"Tuesday"、"Wednesday"、"Thursday"、"Friday" と並べてみると、金曜日だけ s が入っていないことに気づく。これは、火水木曜日はそれぞれ "Tiw"、"Woden"、"Thor" という男神の名に因むが、金曜日は "Freya" という女神の名に因むためである。格変化や文法性をほぼ失ってしまった英語の日常語の中に、「ゼロ語尾」がわずかな痕跡として残っているのである。

★ 今日は「この日」/ 日本語など

 日本語の今日(きょう)はかつて“けふ”と書かれていた。この語は「これ」「この」など近い事物を指すことを示す“こ”と「日付」「日にち」の“ひ”から、“こ”+“ひ”=“けふ”のように成り立った語であるといわれている。なお母音が変化しているのは母音調和という作用とされる。つまり“今日”は「この日」なわけだ。実は「今日」という言葉は、他の言語でも同じような言い方をしているのである。

 最も分かりやすい例にマレー語、インドネシア語の "hari ini" がある。"hari" は「日にち」で、"ini" は「この」「これ」なので、そのまま「この日」と言っている。中国語でも「今日」はふつう“今天”といい、“天”は「日にち」を指すので同じ言い方をしている。アラビア語では (翻字:'al-yaum)と言うが、これは "al" (定冠詞、英語の the のようなもの)と "yaum" (日にち)からできているので、英語で言うと the day と言っていることになり、やはり「この日」と解釈できる。

 ロマンス系言語のイタリア語 "oggi"、スペイン語 "hoy"、ポルトガル語 "hoje" などはラテン語の "hodie" に由来する。これは元々 "hoc die" (この日に)がつづまってできた語なのでやはり同じ言い方をしている。フランス語 "aujourd'hui" は、文字どおりに読むと「hui の日に」と言ってるわけだが、後半の "hui" が "hodie" のなれの果てである。カタルーニャ語の "avui" は "ahír" (昨日)と同じようにさらにその前に前置詞がついた形だ。

 ドイツ語の "heute" は 古高地ドイツ語では "hiutu" だった。これもラテン語 "hodie" のなぞりである "hiu tagu" に由来するので、フランス語などと同じ言い方になる。さらにロシア語の сегодня もまた、сей(これ、古い言い方)とдень(日にち)の生格に由来するので同じ言い方だったりする。

 ちなみに英語の today だけは to- と day (属格)からできており、前半の to- は前置詞 to と同じものらしい。なぜこれが「今日」の意味になるのかはよく分からなかった。

★ 化粧と世界、そして宇宙/ 英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語

 ロマンス語系で「世界」を表す言葉(フランス語 "monde"、スペイン語・ポルトガル語 "mundo" )はラテン語の "mundus" に由来している。実はこの単語は元々「女性用化粧品」という意味だったりする(エトルリア語起源とされるが詳細は不明)。

 どうして「女性用化粧品」が「世界」になったのかというと、これはギリシャ語からの影響と考えられている。ギリシャ語 "kosmos" は「並べる」という意味をもっており、そこから「飾り」という意味をもつようになり、さらに「化粧品」という意味に発展した。英単語 "cosmetics" (いわゆる「コスメ」)はここに因む。

 一方で、「並べる」から「秩序」という意味も派生した。ここから「秩序だった体系」→「世界」、さらには「宇宙」という意味になったのである。ギリシャ語からの借入である英単語 "cosmos" も「(一定の法則や秩序をもった)宇宙」という意味である。

 それをなぞって、ラテン語単語 "mundus" も「女性用化粧品」→「世界」という意味変遷をたどったのだという。まったくコスメの世界は奥深きものである。

★ 「心」の話/ 日本語、中国語、ロシア語、英語

 「」という字は、もともと心臓の形から作られた。この字には、「真ん中」という意味もある。例えば、「中心」「核心」「都心」などはその例である。さらに、日本人にとってはもっともよく使う「こころ」と言う意味も持つ。この3つの意味は、現代中国語 心 (xīn)でも同じである。つまり、「心臓」~「真ん中」~「こころ」という意味を、中国語では同じイメージで捉えているのである。

 実は、ロシア語にも似たような語の関係があり、сердце(スィエルツェ)=「心臓」/「こころ」と、 середина(スィリヂーナ)=「真ん中」は同じ語根からできている。そしてよく見ると、среда(スリダー)=「水曜日」とも似ている。これは、水曜日が週の真ん中であることに因む。

 ちなみに、似た字に「」という字もあり、元は同じ字(語)であるが、具体的な「物の真ん中」を別に表すために作られた字である。こちらの字は現代中国語ではあまり用いられていないらしい。

★ 「シェ」と「カーサ」/ フランス語、スペイン語

 よくフランス料理店などで「シェ」(「シェ・スズキ」など)という言葉を目にする。これはフランス語の「~の家/店に」という意味をもつ前置詞 chez で、店主の名前につけると「~の店」というような意味になる。
 一方で、アパートやマンションの名前では、よく「カーサ」「カーザ」という語を目にする。これはスペイン語 casa (カサ)やイタリア語 casa (カーザ、南部ではカーサ)からとられているのだろう。

 chez、casa は実はラテン語の同じ単語、casa (小屋、掘っ立て小屋)に由来している。ちなみに casa はスペイン語でもイタリア語でも一般的な「家」を表している。フランス語にもこれに対応する語、case があるが、こちらはラテン語の元々の意味(小屋、掘っ立て小屋)を保持している。その代わり、フランス語では一般的な「家」はよく知られているように maison (メゾン)という。こちらはラテン語の mansio(nem) に由来し、「屋敷」という意味である。

 すなわち、スペイン人やイタリア人は自分の家のことをラテン語の「小屋」と呼んでいるのに対し、フランス人は「屋敷」と呼んでいるわけである。なんか凄い。

★ 「ス」=「エ」/ 英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語

 英語で「変な」「よその」という語は "strange" である。フランス語では "étrange" という。また、「学校」は英語で "school" というのに対し、フランス語では "école" という。つまり、英語の "s" = フランス語の "é" という関係が見て取れる。フランス語を覚えるときにはけっこう使える法則だが、これは下のような理由による。

 共通ロマンス語からフランス語へと言語が移行する際に、単語が/sk-/とか/st-/といった「/s/ + 閉鎖音」という音で始まると、発音しにくいと感じられるようになった。そこで、母音e- または i- をこの音群の前につけて発音しやすく整える、という変化が起きた。その後、フランス語ではこの間にある子音 /s/ が摩耗して消えてしまったが、スペイン語、ポルトガル語ではちゃんと保存されている。
 ちなみに、この変化は同じロマンス語系言語の中でも西のフランス語、スペイン語、ポルトガル語などでは起きているが、東のイタリア語、ルーマニア語では起きていない。
 例:「状態、国家」を意味するラテン語 status (英語の state、status はここから)に対し、それぞれ

となっている。

ただし、フランス語 "espoir" 「望み」のように『雅語』としての性格が強い語にはこの法則は当てはまらなかったりする。まあ、何事にも例外はつきものということで。

★ ドイツの呼び方/ 英語など

 「ドイツ」を英語では "Germany" という。中学でこの単語を習うと結構意外に思えるものだが、慣れるとその意外性は忘れてしまう。しかし実は、「ドイツ」とか「ドイツ語」の呼び方は国によってけっこうバラバラなのである。下に主な言語の呼び名をまとめてみた。

言語呼び方備考
日本語ドイツ 
中国語德国 (déguó) 
マレー語/インドネシア語Jerman 
ヒンディー語 (jarmanī) 
アラビア語 (almāniyā) 
ロシア語Германия (Germanija) 
フィンランド語Saksa 
デンマーク語Tyskland 
ドイツ語Deutschland 
イタリア語Germania「ドイツ語」は tedesco
フランス語Allemagne 
スペイン語Alemania 
英語Germany 

 一見互いに関係なさそうだが、よくみると、英語のように「ゲルマン」みたいな言葉から派生したグループと、日本語のようにタ行やダ行で始まるグループと、フランス語のように「アルマーニュ」みたいな発音のグループの3つに分かれることが分かる。

 『英語型』はラテン語のアルプス山脈以北の未開の地の呼び名である Germania (ゲルマーニア)に由来している。この地名はもちろんゲルマン民族の名に由来している。

 『日本型』はドイツ語の deutsch (ドイチュ、「ドイツの」)に由来するのだろう。日本の場合、オランダ語から取り入れた可能性もありうる。中期オランダ語では自らの言語のことを duutsch と称しており、これは英語の Dutch (オランダの、※「ドイツの」という意味もある)の語源でもある。
 この語はゲルマン祖語では *theudiskaz (部族の)という形であったと推定され、ラテン語に対し「部族の言葉」を指していたらしい。ゲルマン民族の一部族の名前、Teuton (チュートン人)もやはりこの語と同一起源である。ちなみにデンマーク語のTyskland は北欧語でゲルマン語の "th" の発音が "t" になった結果である。イタリア語でドイツ語のことを tedesco というのは *theudiskaz の形を反映している。

 『フランス型』は「アレマンネン族(ゲルマン民族の一部族)の地」という意味の Alemannia に由来する。アラビア語の形もスペイン語かフランス語などのロマンス系言語のいずれかから入ったものだろう。

 最後にどれにも当てはまらないフィンランド語の Saksa だが、これは地名 Sachsen (ザクセン)か「サクソン族」(Saxonia)に由来するようだ。 とにかくドイツは一言では語れない国なのである。

★ 日露の奇妙な関係/ 日本語、ロシア語

 日露関係というと、歴史的には戦争したり、ちょっとだけ仲が良かったりと色々だが、言葉の世界では実に奇妙な関係が成り立っているのである。日本語ではロシアはもちろん「ロシア」である(あたりまえ)。一方、ロシア語では日本をЯпония(イポーニヤ)という。

 ここで、世界中の国の名前を日本語では五十音順、ロシア語ではキリル文字順に並べてみる。すると、「ロシア」は五十音順で最後に、"Япония"もキリル文字順で最後に来るのである。これは、すごい偶然である。五十音順とキリル文字の順番はもちろん何の相関性もない。たまたま両国の国名が相手国の言葉の終わりのほうの文字で始まる、というだけである。

 ということは、ロシアで五輪が開かれたら、最後の入場は開催国なので、日本の入場順は終わりから2番目のはず。日本で五輪が開かれても、ロシアはやはり同じ入場順のはずである。ロシアも日本もいずれかの国で大会が開かれた場合、終わりから1番か2番ということに…。
 が、実際には1980年のモスクワ大会を日本はボイコットし、日本で開かれた過去3回は入場順を自国語ではなく、英語アルファベット順で行うと愚を犯しているため、実現していない…。残念。

★ のみとノミ/ 日本語、中国語

 のみ(鑿)と言えば大工さんや彫刻家が使う道具である。ノミ(蚤)と言えば犬やら猫やらについている小さな虫である。両者は日本語では同じ発音なわけだが、実はどういうわけか中国語でも発音が同じで zao という。何か関係があるのでは…?と思って調べてみたが、どうやら偶然のようだ。ただし中国語では "凿/鑿"は第二声で、"蚤" は第三声と声調は異なる。また、道具の鑿を表す場合には "子" を付けて "凿子/鑿子"と言うのが普通である。

★ 「マガジン」は「雑誌」か/ 日本語、アラビア語、ロシア語、フランス語、英語

 「雑誌」は英語のmagazine に対する訳語である。これは、フランス語のmagasin という単語に因んでいる。このmagasin には「雑誌」という意味はなく、「(大きな)店」という意味しかない。フランス語で「雑誌」と言う場合、revue か英語(からの逆輸入)のmagazine をそのまま使うのがふつうである。

 それではどうして「大型店」が「雑誌」と言う意味になったのか。実はフランス語単語magasin には「倉庫」「蔵」という意味もある。英語のmagazine には「(銃の)マガジン、弾倉」と言う意味もあるが、ここにはこの「蔵」という意味が生きている。

 「雑誌」には様々な情報が載っており、それがあたかも色々な品物を詰めた倉庫のようであることから、「倉庫」/「大型店」→「雑誌」という意味に派生したものらしい。ちなみに、ロシア語でも「店」はмагазин(マガズィーン)であり、フランス語から入ったものと思われる。

 さらに、フランス語単語magasin はアラビア語単語(翻字:makhzan)の複数形(翻字:makhaaziin)に遡る。意味はもちろん「倉庫」または「大型店」である。

★ 元過去分詞の単語/ 英語

   英語には過去分詞から派生した語がけっこうある。例えば、形容詞の lost は形を見れば lose の過去分詞 lost と同じ形をしており、過去分詞が形容詞化したものと分かる。実はそれ以外にも、元は過去分詞で、今は分詞として使われない語がけっこうあったりする。集めてみると以下のようなものがある。

単語品詞元の動詞備考
afraid形容詞affraien(中英語)「恐れさせる」という語の過去分詞。フランス語の effrayer に当たる
beloved形容詞beloven(中英語)現代英語に *belove という動詞はない
drought名詞dry「干からびた」→「旱魃」
numb形容詞niman(古語)nim は take に取って代わられた動詞。ドイツ語の nehmen と同根
own形容詞/動詞oweちなみに ought は過去形から
past名詞/前置詞passよく考えると passed と発音が同じ
sacred形容詞sacren(中英語)「聖別する」という語の過去分詞。フランス語の sacrer に当たる
sunken形容詞sink「沈没船」とかそういう語ぐらいでしか見たことない
wrought形容詞work現代では wrought-iron という語に含まれている


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