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ヒンディー語/ウルドゥー語

/  インド=ヨーロッパ語族・インド=イラン語派/ デーヴァナーガリー/アラビア文字表記
 インド パキスタン

使用状況

公用語、またはそれに準ずる地位にある国

 インド、パキスタン、フィジー

ひろがり

 デーヴァナーガリー文字で表記されるヒンディー語とアラビア文字で表記されるウルドゥー語は互いに方言の関係にある。言語学的にはパンジャービー語も含めヒンドゥスターニー語と総称するらしい。語彙の8割以上を共有しておりヒンドゥー教徒が多数を占める国インドではヒンディー語は公用語の中でも筆頭格の扱いを受けている。一方でイスラム教徒が多数を占める国パキスタンではウルドゥー語を公用語にする動きがあるものの言語をめぐる紛争があるため、公用語化されるに至っていない。話し手人口は推定で4億人以上とされる。

発音

主な傾向

 子音の数がかなり多く、帯気音⇔非帯気音の対立、歯茎音の t とインド亜大陸で多く分布する反り舌音の t との対立など、区別に注意が必要な項目がある。母音は基本的には単音、長音、二重母音含めて10種類ある。

発音と綴り字

 ヒンディー語はデーヴァナーガリー、ウルドゥー語はアラビア文字(ペルシャ系に加え、ウルドゥー語固有の文字もある)を用いる。アラビア文字は母音を表記しないため、ウルドゥー語の読みを覚えるまでは時間がかかる。デーヴァナーガリーはもちろんインドの言葉のために作られた文字なので、文字自体覚えるまでに時間はかかるものの、母音が表記されないアラビア文字よりは読みやすい。なので両言語に共通している単語ならヒンディー語で覚えてしまったほうが確実。

 アラビア文字は比較的書きやすく覚えやすいが、ウルドゥー語では流れるような線が特徴の『ナスタアリーク体』で表記されるのでかなり読みづらい。
 どちらも例外的な発音は比較的少なく発音と綴り字の関係はだいたい規則的といえる。ただし、両言語とも子音の後の a(短音)は表記されないため、母音 a を持つ場合と子音のみの場合など曖昧な部分は多少ある。

難しい発音

 帯気音と非帯気音の対立は難しい。反り舌の t を発音するのは慣れればそんなに難しくはないと思われるが、帯気音と組み合わさったり、反り舌の鼻音というものも存在するので、練習するしかない。また、聴き取るのは至難の業で、特に「タ行音」は反り舌音なのか、歯茎音なのか、帯気音なのか、非帯気音なのかの区別は、現地に滞在するくらい耳慣れないと判別はきわめて難しいと思われる。ただし母音は「あいうえお」からでも対応可能なレベル。

文法

格表示屈折を持つが、おもに語順または後置詞による
語順主語 − 目的語 − 述語。繋辞動詞(英語の "be" みたいなもの)を日本語の“だ“です”のように用いて文を作ることがある。全体的に語順は日本語とよく似ている。
冠詞なし
限定詞前置される。形容詞は名詞の性・数・格に合わせて活用するものと、不変化のものとがある。
名詞男性、女性の二性。主格の他に、後置詞の前での『後置格(斜格)』と『呼格』がある。
動詞活用 『直説法現在』のような一語での活用形はあまり使われない。動詞の用法は『分詞』が中心で、多くの場合、繋辞動詞とともに使われて主語に性・数一致をする。完了分詞には原則として受動しかないため、他動詞で過去を表すときには動詞は目的語に性・数一致しなければならない。
おさえておきたいところ
  名詞は主格⇔斜格、単数⇔複数の形を確実に覚えることが重要。動詞の活用形は現在形には例外がないので何とかなるが、過去形に不規則形が多い。動詞・形容詞ともに性・数・格一致をさせなければならない。動詞は、日本語と同じく他動詞と自動詞を別の形で言い分けるので、他動詞⇔自動詞はペアで覚えるのが大切。
 また、ベンガル語も同じだが、1から99までの数字が一語で表されるのですべて覚えなければならない。

語彙

借入/派生

 ヒンディー語とウルドゥー語の文字以外の大きな違いは語彙である。傾向としてヒンディー語は建前上、『ヒンドゥー教徒の言葉』であるため、インドの古典語を綴るサンスクリットから学術用語や専門用語を創り出すが、ウルドゥー語は『イスラム教徒の言葉』であるため、ペルシャ語やアラビア語からこういった用語を創り出すのを好む。しかし歴史的な経緯から両者ともにアラビア語やペルシャ語に由来する語彙は非常に多く、アラビア語の語彙の知識がかなり使える。ただしウルドゥー語に関してはアラビア語の女性語尾、ター・マルブータの扱いが語によって異なるのでアラビア語を応用する場合は注意が必要。

 また、歴史的な経緯から英語からも多くの語を取り入れている。

日本語とのかかわり

 サーリーとか、パジャマ、シャンプー、ペンパルなど英語を通して入った現地の物産が主で、現代のインド/パキスタンの言葉は日本語にはあまり入ってきていないようだ。一応先祖(の縁戚語)の梵語(サンスクリット)から日本語に入った語彙は沙汰、卒塔婆、仏舎利、旦那など、仏教系の単語に見られる。

副産物

 パンジャブ語、マラータ語、ネパール語、グジャラート語、ラージャスターン語などインド北部のインド=アーリア系諸語の修得にいくらか応用が利くはず。これには12大言語のベンガル語も含まれるので非常にお得と思われる。また、単語レベルなら南部のドラヴィダ系諸語、それにペルシャ語から語彙を取り入れているのでここにも応用できるはず。ドラヴィダ系諸語には、発音面で応用できる点もなくはない。

英語
ポルトガル語
スペイン語
フランス語
ドイツ語
ロシア語
アラビア語
ベンガル語
マレー語/インドネシア語
中国語(普通話)
日本語

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